労働判例・裁判例紹介 弁護士西川暢春

弁護士西川暢春がやっている労働判例postの補足ブログです。Xでは140文字以上は予約投稿できないため、長いものはこのブログで書いております。

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

暴力を伴うパワハラについて被害者の復帰までに加害上司を配置転換する義務があったとされた事案

静岡地裁R3.3.51月27日に女性職員が上司から左上肢を3回こぶしで付く暴力を伴うパワハラを受け、2月5日に不安焦燥状態で1か月の自宅療養を要すると診断された。主治医からは加害上司と一緒に仕事をする状況での復職に消極的な見解が示された。また、女性職員…

1年以上服薬せずに日常生活を送っていた休職者の復職可否判断

名古屋地裁R3.8.23躁うつ病(双極性障害)で休職していた休職者が復職を申し出たが、会社は認めず、休職期間満了により解雇した→休職者は復職を申し出た当時、1年以上服薬せずに日常生活を送り、生活リズムや気分が安定していたことは認められる。しかし、双…

「復職可能であり、3か月間は短時間勤務及び軽度業務に限る配慮が必要」と主治医が診断した事案についての復職可否判断

長崎地裁R1.12.3統合失調症の休職者の復職について主治医は「復職可能であり、3か月間は短時間勤務及び軽度業務に限る配慮が必要」と診断→一方で、その後の照会に対して、主治医は、『復職可能性について客観視できるデータがないため、就労がかなわない場合…

入社後約4年間にわたり「残業手当」の名目で支給していた賃金が時間外労働の対価とは言えないとされた例

札幌地裁R5.3.31運送会社が運転手の売上の10%を「残業手当」の名目で支給。入社後約4年間にわたりこの支給を受けていた運転手が残業代請求訴訟を提起 →雇用契約書には残業手当の記載がなく、賃金規程には労働基準法上の計算式に基づく割増賃金の規定がある…

日常的な強い叱責がパワハラにはあたらないが安全配慮義務違反ありとされた事例

徳島地裁H30.7.9銀行職員が自殺し、遺族はパワハラ自殺と主張→赴任先で日常的に強い叱責を受けていたが職員のミスを指摘するものであり指導の範囲を逸脱しない。ただし、上司はこれらの状況を十分認識しており、職員が赴任後継続的に異動を希望し続けていた…

71歳の母親と28歳の妻、2歳の長女と同居している従業員に単身赴任となる転勤を命じ、拒否したため懲戒解雇した事案

最高裁S61.7.14大卒営業担当者に対し神戸から名古屋に転勤命令。営業担当者は、大阪府内で71歳の母親と28歳の妻、2歳の長女と同居しており、転勤に応じると単身赴任になるとしてこれを拒否した。会社は懲戒解雇。→①会社の就業規則には、業務上の都合により従…

外国人技能実習生の指導員について事業場外労働のみなし労働時間制の適用を否定した高裁判例

福岡高裁令和4年(ネ)第595号外国人技能実習生の指導員に事業場外労働のみなし労働時間制を適用できる?→実習受入れ企業への巡回業務の具体的スケジュールは指導員の裁量に委ねられていたが、訪問先・訪問頻度は決まっていた。日報により業務の遂行状況につい…

会社がずさんな秘密保持誓約書の提出を求めたことが会社の請求を認めない理由の1つとして判示された事例

大阪地裁R5.4.17会社が退職者に営業秘密を持ち出されたと主張して不正競争防止法に基づく損害賠償請求。従業員は問題の情報は秘密として管理されていなかったと主張→ファイルや書面に営業秘密である旨の表示がされていなかったこと、社外からのアクセスは制…

スマホの位置情報を示すGooglemapのタイムライン記録を証拠に残業代を請求された事例

東京地裁R1.10.23飲食店の従業員がスマホの位置情報を示すGooglemapのタイムライン記録を証拠に残業代請求→記録は編集可能であり完全に客観的証拠とはいえないが、取締役の証言や店の営業時間等とおおむね整合している。労働時間を適切に把握すべき会社が、…

懲戒処分としての降格に伴い基本給、役付手当を減額することは有効か?

東京高裁R3.6.23タイムカードを改ざんした部長を懲戒処分として次長に降格。これに伴い、基本給は104万円から75万円、役付手当は20万円から15万円に減額→降格が有効としてもそれに伴う減給には別途労働契約上の根拠が必要。役付手当については、賃金規程で部…

賃金規程に基づいてした給与等級引き下げの効力について判断された事例

東京高裁H19.2.22年功型賃金から成果主義賃金への変更にあたり、賃金規程に「評価の結果、本人の顕在能力と業績が、属する給与等級に期待されるものと比べて著しく劣ると判断した際は、給与等級と処遇を下げることもあり得る」と定めた。これに基づいて評価…

犯罪を犯したとして起訴され、起訴休職期間満了で解雇された職員が、不当な起訴であり解雇は刑事裁判終了を待つべきと主張した事例

大阪地裁H29.9.25 傷害致死罪で起訴された助教について、大学は起訴休職を適用し、就業規則に定めた2年の休職期間満了で解雇。助教は、不当な起訴であり、解雇は刑事裁判終了を待つべきと主張 →刑事裁判が2年を超えることがあるからといって、大学が2年を超…

主治医は復職可、産業医は復職不可と診断した従業員の復職可否について裁判所が判断した事例

東京地裁H23.2.25 会社の異動内示に強い拒否反応を示して不安障害を発症して休職していた従業員について、休職期間満了直前に主治医が「復職可。但し、会社が信頼回復の努力をし、発病時の上司が係わる職場でないことが条件」と診断。一方、産業医は「本人は…

派遣会社が予定していた契約を得られなかったことを理由に行った内定取消の効力について判断した事例

大阪地裁H16.6.9派遣会社が家電量販店からの業務委託契約を見込んで派遣する販売員を募集して内定を出し、研修した。しかし、その後予定の契約が得られず、内定を取り消した→内定者との雇用契約において就業場所が本件店舗に限定されており、派遣会社は内定…