労働判例・裁判例紹介 弁護士西川暢春

弁護士西川暢春がやっている労働判例postの補足ブログです。Xでは140文字以上は予約投稿できないため、長いものはこのブログで書いております。

2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

適応障害による休職からの復職後も異常行動がある従業員に対する再休職命令の効力

大阪地裁R2.7.9適応障害で休職していた従業員が復職後から異常行動があり、指定医の受診も拒んだため、会社は再休職を命じた。その9か月後に休職期間満了により退職扱いとした。→再休職を命じられた時期に、①周囲が静かであるのに音が気になって業務に集中で…

覚醒剤使用で懲戒解雇された従業員の退職金不支給についての判断事例

東京地裁R5.12.19 鉄道会社が覚醒剤使用で有罪判決を受けた車両検査主任を懲戒解雇し、退職金規程に基づき退職金を不支給とした →5年の覚醒剤使用歴があり、依存性は軽視できない。安全運行を支える現業職で覚醒剤が体内に残る状態で検査業務に従事していた…

復職のために会社が指定した医師作成の証明書を要すると定める就業規則の効力について判示した裁判例

東京地裁H26.8.20就業規則で、私傷病休職について「傷病が治癒し且つ通常勤務に耐えられる旨の会社が指定した医師の作成した証明書の提出を求め、復職できると会社が認めたとき」に復職を認めると定めた→労働者が債務の本旨にしたがった履行の提供をしている…

ハラスメント調査に求められる中立性・公平性について判示した裁判例

東京地裁R1.11.7大声での執拗な叱責等がパワハラにあたるとして訓戒処分を受けた人事部の課長が、パワハラを認定した社内調査の結果は誤りであるとして、処分の無効を主張した→調査を行ったのは使用者から依頼を受けた顧問弁護士であるものの、使用者から意…

職場内の人間関係を理由に休職者の復職を認めないことは可能?

大阪高裁H27.2.26 双極性障害による休職からの復職を認められなかった休職者が「職場内の人間関係を理由に復職を認めなかったことは不当である。人間関係の調整は会社が業務命令で実行すべきである」と主張 →この従業員の休業は3回目であり会社は過去2回復…

職場内での悪影響を理由に復職不可とできる?

横浜地裁H30.5.10 うつ状態と適応障害で休職中の職員について主治医が就労可能と診断。しかし、事業者は産業医の復職不可の意見を参考に退職扱いとした →産業医の意見は、休職前の状況からすると復職は他の職員に多大な悪影響が出るということが理由だが、こ…

職場内で秘密録音したデータを民事訴訟の証拠として利用できる?

東京高裁R5.10.25 歯科医院に勤務する職員が、理事長が院内で自身の悪口を言っている疑いをもち、院内の控室に秘密裏にボイスレコーダーを設置。理事長に対する訴訟でこの録音を自身に対するハラスメントの証拠として提出した →従業員の誰もが利用できる控室…

正社員に寒冷地手当を支給するが契約社員には支給しないことは違法?

東京地裁R5.7.20 日本郵便が正社員には寒冷地手当を支給するが契約社員には支給せず→寒冷地手当は寒冷地に勤務する正社員の暖房費等増加を補助し、勤務地による正社員間の公平を図る趣旨で支給されている。一方、契約社員は勤務地ごとの生計費も考慮して勤務…

労災請求における事業主証明の拒否が問題になった事案

大阪地裁R5.7.27従業員が労災保険の休業補償給付支給請求書を送付し、労働保険番号や事業所情報の欄等を記入するように求めた。しかし、会社は事業主の証明等がなくても請求書は受理されるので、請求手続は従業員の方で進めるようにと返答。→労働保険番号、…