労働判例・裁判例紹介 弁護士西川暢春

弁護士西川暢春がやっている労働判例postの補足ブログです。Xでは140文字以上は予約投稿できないため、長いものはこのブログで書いております。

職場内で秘密録音したデータを民事訴訟の証拠として利用できる?

東京高裁R5.10.25

歯科医院に勤務する職員が、理事長が院内で自身の悪口を言っている疑いをもち、院内の控室に秘密裏にボイスレコーダーを設置。理事長に対する訴訟でこの録音を自身に対するハラスメントの証拠として提出した

→従業員の誰もが利用できる控室で会話を秘密録音する行為は、他の従業員のプライバシーも含め、第三者の権利・利益を侵害する可能性が大きく、相当な証拠収集方法とは言えないが、著しく反社会的とまではいえないから、証拠から排除されない。理事長が、職員について育ちが悪いとか、家にお金が無いなど、職員を揶揄する会話が録音されており、職員が耳にすることを前提とした会話でないことを踏まえても、理事長の地位・立場を考慮すれば、他の従業員と一緒になって職員を揶揄する会話に興じたことは不法行為にあたる。賠償命令。