労働判例・裁判例紹介 弁護士西川暢春

弁護士西川暢春がやっている労働判例postの補足ブログです。Xでは140文字以上は予約投稿できないため、長いものはこのブログで書いております。

精神疾患からの復職にあたり、配転命令を拒否する従業員への対応事例

東京地裁R5.12.28

東京本社勤務の従業員が仙台支店への配転を命じられた後、配転に応じることはできないと会社に伝えるとともに、うつ病(重度)と記載された診断書を提出し、欠勤。会社は6か月間の休職を命じた。その後、休職期間満了前に「復職可能」と記載された診断書を提出し、配転命令は無効であるとして東京本社での復職を求めた。会社は復職を認めず、休職期間満了による退職扱いとした。
→本件で会社には配転命令権があり、配転命令は有効である。復職可否の判断対象となるのは原則として休職時の業務であるから、本件においては仙台支店における業務である。従業員は、会社に対し、配転命令が無効であるとう前提のもと東京本社における復職を求めていたから、診断書の記載についても東京本社における復職を前提としたものと解され、仙台支店において復職することが可能である旨主治医から診断されていなかったといえる。主治医は、その後も、会社に対し、従業員の実家から通勤可能な東京近郊での勤務を推奨する旨回答するなど、従業員の意向を受けてか明確に仙台支店において復職することが可能であると診断していない。このように、従業員について明確に仙台支店において復職が可能である旨の診断がなく、従業員について精神障害が治癒し仙台支店において復職が可能であったということはできない。退職扱いは有効と判断。