労働判例・裁判例紹介 弁護士西川暢春

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特許事務所が入所時に従業員に提出させた競業避止義務の誓約の効力についての判断事例

大阪地裁H17.10.27
特許事務所が入所者に「退職後2年間は、事務所の顧客にとって競合関係を構成する特許事務所・法律事務所に就職しない」とする誓約書を提出させた
→一応、再就職禁止先が限定されているが、「事務所の顧客にとって競合関係を構成する」との文言の意味は一義的に明確であるとはいい難い。この誓約を守るためには、退職者は事務所のすべての顧客が依頼している案件を把握したうえで再就職先がその顧客から依頼を受けているか否かを調査しなければならないが、本件で事務所は顧客から委任を受けている分野の一覧を開示するなどもしておらず、退職者は禁止される再就職先にあたるかどうかの判断もできない。さらに、退職者は弁理士の補助者にすぎず、高い地位、高い報酬を得ていたわけではないことなどを考慮すれば、誓約書の条項は退職者の職業選択の自由を不当に制約するものであり、無効と判断。